こんにちはdbd半です。
そろそろ梅雨時期でしょうか。昨日今日と特にジメジメしていますね。
さて、ツイッターのほうで、思いつくショートストーリーを気まぐれにアップしています。
ダークのだったり、ヘンテコだったり。
どうやらショートストーリー<とあるところシリーズ>があっているようで、割と次から次へと浮かびます。
創作意欲の出し口としては、ちょうどいい感じです。
今日もその一遍が浮かんだのですが、ちょっとナイーブな内容なので、ツイッターではなくこちらに挙げてみようと思います。
思い当たる人には、ちょっとキツイかもですが、よろしければご既読くださいませ。
※時間があれば動画アップも考えております。
絵は浮かんだのですが、素材足らずで断念。f^_^;もし、ユーチューブに挙げたら、おしらせしますので、是非また見にいらしてください^ - ^
「寡黙な男」・・・・・・・・・・・・・2018/05/30 dbd半
とあるところに、一組の夫婦がいた。
ハムエッグを乗せた白い皿をテーブルの上においた。その手が残り、女がポツリと呟いた。
「どうして、私たち子供が出来ないのかしら」
男は黙っていた。
朝食はいつものように美味そうだった。だが、それを女に伝えた事は無かった。
女はただ逡巡していた。これは、ずっと考えていたことだった。どうして今、口をついて出たのかはわからない。でも、ポンと口から飛び出したのだ。
女はもうすぐ四十を迎えようとしてた。
男はどれくらいか経ったか分からない間の後、こう返した。
「できる時にはできるよ」
女は怒りを覚えた。
何を他人事のように。男はそれで良いかも知れないが、女には体のタイムリミットがあるのだ。自分はそれで良いかも知らないが、私は違う。
そう言って引き出しから勢いよく取り出し、判子を押した紙ペラ一枚を投げつけてやった。
の、つもりだった。
現実は、ただ床を見つめ、呆然と立ち尽くしているだけだった。
* *
女は公園にいた。
木陰のベンチに座り公園で遊ぶ親子を眺めていた。
無邪気な仕草が可愛らしかった。
ボールが転がり、女の前に来た。女は笑顔で投げ返してやった。
お礼を言って親元に向かう子供を見ていて、自分にはもう体験できないのかと思うと、やりきれなかった。
やがて男がやってきて隣に座った。
男はまたしばらく黙っていたが、珍しく言葉数多く語った。
「自分たちには、子供は出来ないかもしれない。どうか分からない。
でも、俺たちが生きることで、人と関わることで、影響をしながら、次の世代に続いていくと思っているんだ。
それは次の世代を育てるって事なんだ。
だから、俺たちにとって、これから生まれてくる子供たち皆が、子供なんだ。
俺は、・・そう思ってる。」
女はいつも寡黙な男が、ぎこちなくとも何とか言おうとしていることにまず驚いた。
そして、納得できているはずもないのだが、答えを求めるでもなくこう聞き返していた。
「私が投げたボールは誰かを育てるのかしら?」
男は、女を見つめていた。そして黙って、またぎこちなくうなずき、しっかりと女の肩を抱いた。
女は驚いたが、そのままでいた。
女の肩に温かさが伝わってきた。温かさは徐々に伝わり頬にも伝って流れた。
ポタリ、ポタリと、服にいびつな円形のシミができた。
女はこう思った。
いますぐに、そんな風に思えるはずはない。
自分の子供と他人の子供は違う。
それは、どうしようもない。
どうしようもない。
私はただ子供が欲しかった。この手で育てたかった。子供と過ごす時間を、ずっと描いてた。
まだ、わからない。わからない。
でも、でも、もし、それができないなら・・。
私の行動が、言葉が、次の世代の子供のためになるのなら、どれだけ私の救いになるだろう。
どれだけ私の価値になるだろう。
どれだけ・・・。
穏やかな昼下がりの公園、木陰で女はひっそりと嗚咽をこぼし始めた。
風が吹くと木々の間から日差しがこぼれ、向こうでは明るい子供たちの元気な声が鳴り響いた。
男も何も言わずに唇をしっかりと結びんでいた。男もまた外傷のない痛みにぐっと耐えていた。
何でもない昼下がり。
二人は芝生を見つめていた。
親子で遊ぶその姿はとても眩しかった。
二人は何かを語ることもなく、ただ互いに温もりを感じあった。
そろそろ蝉が鳴きはじめていた。
・・・・・・・・・・・・・
悲惨な事件や有り得ないニュースを目にします。その度に、やりきれない思いが増幅します。
私にとっても、作品は一つ一つが小さな子供です。
今、目の前にいなくても、全てが影響しあい、いつか後世に何かを伝えられたらと思っています。
くだらないことでも良い。子供達の心からの笑顔が見たいです。