こんばんわdbd半です。
さ、皆様、前回は少し脱線しましたが閑話休題。
前々回に引き続き、
今回も「よだかの星」文系半ちゃんによる独断と偏見での考察第2弾を行なって参りますよ!
では、最初に関連内容を貼り付けますので、まだの方、もっかい見てみようという方はご参照くださいませ。
イメージ画像などモリモリの過去ブログ
前回にも挙げました目次です。
目次
《長く愛される理由〜描写》
①単語、「もう」「まっすぐ」「まるで〜ように」が多い!のはなぜ⁉︎
②情景描写は五感から入る!
③色
《長く愛される理由〜ハッとする瞬間》
④よだかはなぜ星になれたのか?
⑤よだかの“さいご”はいつなのか?
⑥ナレーションは何者なのか?演劇においてのナレーションのポジション
前々回は、この①の項目について書かせて頂きましたね!
今日はこの続きです。
②情景描写は五感から入る!
半はね、この五感から入るというのはてもてすごいテクニックだと思っているんです。なぜなら、ただの状態のものが、一気に人間らしさを醸し出しアウトプット側(書き手・作者・表現者)とインプット側(読者・視聴者・お客さん)がシンクロする書き方だと思うんです。
そう、この五感というのがポイントです。
ちょうどカメラで必要なところにピントを合わせたとき、周りはぼやける変わりに一部に焦点が当てられ、その一部分を鮮明に焼き付けるようなイメージ。それが、文字におこされたとすればきっとこのような表現になるのだと思います。
こういった手法は、今の小説文学でも多分に使われていますよね。特に効力を発するのが一人称の書き物の時です。とてもリアルな世界を読者に味合わせてくれます。
そうリアル。
例えば。お家にあったこちらのご本。
愛川晶作「 6月6日生まれの天使」 より抜粋
よだかの星のシーンにも出てくるような、眠りから覚め、況を確認し意識がはっきりとしてくるシーンです。
・・荒い息遣いが、聞こえた。
しばらくの間、自分自身が呼吸する音だと気づかなかった。肩が大きく上下している。
喉がカラカラに乾いていた。二、三度唾を飲み込んでから、静かに眼を開けてみる。視野全体が白一色に塗られていた。
雪の荒野・・・・違う。そんなはずはない。何しろ、この暑さだ。
※特にこの小説を選んだ意図はありませんが、一人称のイメージがとても強くありました。というか、一人称でしか書けない小説ですよね(笑)
・・荒い息遣いが、聞こえた・・先ずは聴覚から現在の状況のヒントが出てきます。
次に意識が出てきて
肩が大きく上下している。・・体の動き、つまりは体感、喉の渇きから味覚、視野全体が白一色に塗られていた。というところから・・視覚、そしてさらにはっきりとした意識。
手探りで状況を探るという時、このように五感をフルに動かせて丁寧に一個づつ情報をキャッチして次の情報を収集、それらを総合的な観点から意識に結合させていきます。
その一つづつの所作は実は普段何気なくしている所作と変わらないはずなのに、一つづつを挙げていくことで、より鮮明で印象に残りリアリティを引き出します。
では、「よだかの星」に振り返ってみてみましょう。
倒れ込んだよだかが、めを開けるシーンです。
つめたいものがにわかに顔に落ちました。よだかは眼(め)をひらきました。一本の若いすすきの葉から露(つゆ)がしたたったのでした。もうすっかり夜になって、空は青ぐろく、一面の星がまたたいていました。
つめたいもの、、触覚
眼を開きました、、行動
一本の若いすすきの葉から露が滴ったのでした。、、視覚
一面の星が瞬いていました。、、視覚
具体的に見ていきましょう^ - ^
倒れ込んだよだかは目からの情報はありません。
皮膚に落ちた冷たい感触。これが唯一の情報なのです。
そこから、瞳をあけ、目からの情報が飛び込んできます。
若い一本のすすきに残った露の塊。ちょうど目の前にあったものなのでしょう。ああ、これが自分の目を覚まさせたのかと、気づきます。
そして、視野が広がりその一本のまだ露が残ったすすきの向こうが見えてきます。
一面の星が、瞬いていました。
いかがでしょうか?一挙一動で情景がどんどん浮かび上がってきませんか?
面白いことに、この短い一文ですが、ト書き(舞台では台本でセリフ以外の動きを書いたものをト書きと言います。)に当たる部分は、このようによだかの心情と非常にリンクしています。※今回私たちがやったト書きは朗読劇だったためナレーションがセリフとして朗読しています。
読者を主人公と同じ目線に持ってくる効果をもらたしているんです。
これはね、めちゃくちゃ印象に残る!
読者が(朗読劇でいうと視聴者が)、読者と同じものを感じて行動して同じ視界になるってことなんですよっ!!
例えば、これが、
若いすすきの葉から露がしたたり、よだかは目を覚ましました。もうすっかり夜になり一面の星が瞬く夜になっていました。
リライト:半
文章としては成り立ちますが、印象に残る物はありますか?
ただの状況を述べいるだけです。読者としてはどちらかというと面白みに欠けますよね?
そしてね、演劇面でいうと、こういった描写はね、役者にはおいしいっ!!ものなんです!!
えっ?何がおいしいかって?
役者は五感を感じ最終的にまた感じ続けながら、台詞を発します。
「おいしい」というセリフがあるなら、何を食べてどんな感触だったのか、味はどんなものだったのか、それを踏まえて出てくるのが「美味しい!!」というセリフです。
普段は、どんな感触でどんな風に食べてどんな味だったかなんて、セリフとして言うことはありません。
セリフに「おいしい」と書いてあれば、それまでの動きや気持ちを作っておいて、タイミングよく音を出すだけて、言うのは「おいしい」だけなのです。
この前振りをね、セリフとして言えるって言うのはね、役者にはよりお客さんと同期できるチャンスってことでもあるんですよ!
同時進行でお客さんにも、その心情を一個ずつ吐露することで落とし込んでいくわけですからね!
これ以上に、お客さんをシンプルにフェイドインさせていく手法はあるでしょうか?
そして、その一つづつの五感が繊細であったり美しさを持っていればなおのこと、このくだりはカッコいい見せ場になります!
ただでさえ、こういうくだりはお客さんも耳を傾けているわけです。五感から入るなら利き手読み手(聞き手) 自身も五感の感度が良くなっているはずです。
そこに情景の美しさや繊細さきらびやかさをプラスするなら、ただ美しいというものではなくキラキラと輝く宝石のような美しさを感じたり、今にも崩れ落ちてしまいそうなトランプタワーのような繊細さを出せたり、咲き誇る大輪の花のようなきらびやかさをお客さんにも感じ取ってもらうことが可能です。
これほど最強なテクニックはないのではないでしょうか?
ちなみに、私が一番最初に行った映像芝居『エンドレスサマー』こちらについてもそのような描写がありました。
時間の都合上、どうしてもカットしなければなりませんでしたが、これは大好きなシーンの一つなので、少し抜粋して書かせていただきます。
女の前に、謎めいた男が現れるシーンです。
女 (引用個所はすべて台詞です-一人芝居)
蛍みたい・・・
まずは足元から。ああ、いつもと同じだわ。少しくたびれた茶色い編み上げ靴、針葉樹の葉のような濃いグリーンのコードュロイのパンツ。水色の紺色の千鳥格子模様のフランネルのシャツ。いつも顔はあらわれていないのに、左手で膝のあたりをせわしなくたたいている。無精ひげがまばらなシャープなあご。口、鼻、・・・。
そう、目と眉が出て明らかに寂しさが伝わってくる。右手には一冊の本。ため息を一つ。ここまではいつもと同じ。ついで動く口物との形は・・・・ああ、今日も読み切れない。
やっぱり今日も
そうやって黙ってひとり本を読んでいる。
引用:エンドレスサマー
どうでしょうか。こちらは主に目線をたどる形で、女の視線が徐々に上に上がっていくのがとてもよくわかります。男がゆっくりと足元から現れる様子でもあります。
目の前に不思議と現れるこの世界観。
それから口元から発するであろう声(音・聴覚)を期待するが、けれどもそれが得られないもどかしさ。
ただの状態ではなく、そこから男の物憂げな寂しさと、男に何かを求める女の期待とそれがかなわないと分かっている不快感が表現されています。
あぁ、なんて素敵なセリフなんでしょうか。本多さんありがとう。
次回再演するならカットなしオールフリーで臨みたいです。(笑)
脱線ですが、まだエンドレスサマー(カット版をご覧になっていなければどうぞ見てみてくださいね☆)
いかがでしたでしょうか?
おそるべし宮沢賢治さんです。
宮沢賢治さん作品はたくさん映像になったり朗読されたりしています。
役者にとって制作者にとって、これを言いたい!このシーンを作りたい!と思わせるものがたくさんあります。
それって良い台本(やりたいなと思う台本)の一つの要素なのではないでしょうか?
よだかの星の情景がとても美しく感じるのは納得です。
こういったシーンがみんなを魅了するのかもしれませんね!^_^